会計と税務

「のれん」の償却

1 企業結合基準の営業権(のれん)の定義、償却方法

(定義)
被取得企業または取得した事業の取得原価が、取得した資産および引き受けた負債の純額を超過する額を言います。
(償却)
償却期間20年以内の効果の及ぶ期間で定額法その他の合理的な方法
で規則的に償却します。

2 「営業権」の内容による分類

営業権

  • 独立した資産として取引される慣行がある営業権(=無形固定資産:ナンバー権、顧客リスト、ノウハウ、 データーベース等)
  • 人的条件や自然的条件などによる超過収益力としての営業権(=「資産調整勘定」、「のれん」)

3 企業結合基準による「のれん」の計上有無

① 持分プーリング法
結合後も当事会社が従来と同じように存続していると見ます。資産負債を帳簿価額で引継ます。「のれん」は計上しません。
② パーチェス法
取得する資産負債を時価純資産で引継ます。
支払った対価の額が資産負債の純資産価額を超える場合については「のれん」を計上します。"
③ 共通支配下の取引結合
当事企業のすべてが、結合の前後で同一の企業により支配され、かつその支配が一時的でない場合は譲受法人は資産負債を帳簿価額により計上し、譲受対価として交付した現金等と帳簿価額により計上した資産負債との差額について「のれん」を計上します。

4 税法上の「のれん」 (事業の譲受に際して生じる「資産調整勘定」)

① 計算方法

資産調整勘定(のれん)=
事業の譲受により交付した金銭-*移転を受けた資産負債の時価純資産額
(*資産が営業権の場合、独立した資産として取引されるものに限ります。∴独立して取引される営業権は資産調整勘定の対象になりません。)

② ただし、その事業の譲受は、事業の譲受直前において営む事業およびその事業の主要な資産負債のおおむね全部が事業の譲受法人に移転するものでなければなりません。(令123の10①)

③償却方法

5年償却 (損金経理要件はありません=強制償却)  
*償却限度額=資産調整勘定×その事業年度の月数/60 (法62の8④)

5 税法上の営業権(無形固定資産)

営業権(独立して取引されるもの)
無形固定資産として5年定額法(損金経理要件です)
*ただし、企業会計に合わせて20年でも構いません。
*期中取得でも按分計算不要です。(令59①一)

「土地」の減損

固定資産である土地の減損について

1 減損会計基準(基準2)によれば

●「資産の回収可能価額を著しく低下させる変化」とは
  • (1)その資産が使用されている事業の廃止または再編成
  • (2)当初の予定よりも著しく早期に資産を処分すること
  • (3)資産を当初の予定と異なる用途に転用すること
  • (4)資産が遊休状態になったこと
等をいいます。(減損会計基準注解(2))
●資産の市場価格が著しく下落したこと。
等の事実があれば減損損失を認識すべきかどうかの判定を行うこととなります。

2 これに対し、税務上固定資産の評価損の計上が認められる事実として

  • (1)災害により著しく損傷したこと
  • (2)1年以上にわたり遊休状態であること
  • (3)本来の用途に使用することができないため他の用途に転用したこと
  • (4)固定資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと「所在する場所の状況が著しく変化したこと」については
    ①立地条件の変化や
    ②地盤の沈下または隆起があったことがあげられています。
  • (5)会社更生法等により評価替えの必要が生じたこと
  • (6)これらに準ずる特別な事実
これらの事実により固定資産の価額がその帳簿価額を下回ることになった場合に損金経理で帳簿価額を減額することにより評価損の計上が認められます。

(令68①三)
従って、単なる市場価格の下落だけでは評価損(減損)が認められないので税務上は、注意が必要になります。

棚卸資産(販売用土地含む)の減損

会計

  • ○ H18.7.5企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」によれば、通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準において通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する

    棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における「正味売却価額」が取得原価よりも下落している場合には、当該「正味売却価額」をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価との差額は当期の費用として処理することとされています(基準7)。
  • ○ この「正味売却価額」とは売価(売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいうこととされています(基準5)
  • ○ また、売却市場において市場価額が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とするとされ、これには、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる場合や、契約により取り決められた一定の売価を用いる場合を含むこととされています(基準8)
  • ○ 低価法においては前記に計上した簿価の切下額の戻入れに関しては、当期において戻入を行う方法(洗替え法)と行わない方法(切離し法)のいずれかを棚卸資産の種類ごとに選択適用できるとされています(基準14)

税務

棚卸資産の評価方法は

①原価法として(令28①一)
イ 個別法 ロ 先入先出法 ハ 総平均法 ニ 移動平均法 ホ 最終仕入原価法 ヘ 売価還元法
の6方法が(H21年度改正で後入先出法、単純平均法が廃止されました。)規定されています。また評価方法を選択しなかった場合は最終仕入原価法と定めています。
②低価法として(令28①二)
期末棚卸資産を種類等のことなるごとに区別し、前記イからヘまでのうちいずれかの方法により算出した取得価額による原価法により評価した価額とその「事業年度終了の時における価額」とのうちいずれか低い価額をもってその評価額とする二つの方法があります。
  • ○ そしてこの場合の「事業年度終了の時における価額」の算定にあたっては、通常、商品または製品として売却するものとした場合の売却可能価額から見積追加製造原価(未完成品に限る)および見積販売直接経費を控除した「正味売却価額」とされています。(法基通5-2-11)つまり、会計と同様の規定になっています。
  • ○ 注意が必要なのはH23改正において「切離し低価法」が廃止とされました。経過措置はあるものの会計上「切離し低価法」を採用する場合は申告調整が必要になるものと考えられます。
  • ○ また、棚卸資産の評価方法を変更しようとする場合は、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を所轄税務署長に提出し、承認を得なければならないこととされています。(令30②)

上場株式の減損

会計基準

  • ○ 会社が保有する上場株式について、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復する見込みがあると認められるときを除き、減損処理を行います。
  • ○ この場合だけに限らず、上場株式の時価の下落率がおおむね30%以上50%未満である場合にも、会社が自主的に時価が「著しく下落した」と判断するための合理的基準を設けて、その基準に基づき回復可能性を判断し、回復可能性が無いとすれば、減損処理をしなければならないとされています。
     (企業会計審議会 平成11.1.22「金融商品に関する会計基準」20項、日本公認会計士協会 平成12.1.31「金融商品会計に関する実務指針91項)

税務の取扱い

○上場株式の
  • 期末時価が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、
  • 近い将来時価の回復が見込まれなければ
評価損の計上は認められません。(法法33②、法令68①二イ、法基通9-1-7)

そして、評価損はこれらの事実が生じた事業年度で計上します。(損金経理要件)
○この「近い将来時価の回復が見込まれない」とは、法人の側から
  • 過去の市場価額の推移や市場環境の動向
  • 発行法人の業況等
などを総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては税務上その基準が尊重されることになります。

なお、発行法人に係る将来動向や株価の見通しについて、専門性を有する客観的な第三者の見解

(具体的には、専門性を有する第三者である証券アナリストなどによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、発行法人に関する企業情報等を用いて、当該株価が近い将来回復しないことについての根拠の提示。)があれば、これを合理的な判断の根拠のひとつとすることも考えられます。

国税庁平成21年4月 上場有価証券の評価損に関するQ&A Q1
(参考文献) 平成25.5.29発行 成松洋一著 「税務上の評価損の実務事例集」 31

固定資産の減損と税法

1 企業会計における減損損失と法人税法の評価損について

固定資産について所定の事実が生じ、時価が帳簿価額より下落した場合には、企業会計では減損損失、法人税では評価損の計上が認められています。両者の規定の仕方を比較してみると
企業会計の減損損失
法人税法の評価損
(1)資産が使用されている営業活動から生じる損益またはキャッシュフローが、継続してマイナスとなっているか、あるいはマイナスとなる見込みであること

(2)資産が使用されている範囲または方法について、その資産の回収可能価額を著しく低下させる変化(資産が使用されている事業の廃止、再編、当初の予定より著しく早期の資産の処分、資産の用途変更、資産の遊休状態等)が生じたか、あるいは生ずる見込みであること

(3)資産が使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは悪化する見込みであること

(4)資産の市場価額が著しくしたこと等の減損の兆候が生じた場合に認識します。

(企業会計基準委員会・平成14.8.9「固定資産の減損に係る会計基準」「固定資産の減損に係る会計基準注解」)
(1)固定資産が災害により著しく損傷したこと

(2)固定資産が1年以上にわたり遊休状態にあること

(3)固定資産が本来の用途に使用できないため他の用途に使用されたこと

(4)固定資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと

(5)上記(1)~(4)に準ずる特別の事実が生じた場合

に評価損を計上する事ができます。

(法法33②、法令68①三)
2 このように、企業会計の減損損失は、資産の収益性や経営環境の変化、市場価額の下落等の経済的な観点から認識する事に対し、法人税法における評価損は、その資産事態に客観的、物理的な事由が生じた場合に限って計上する事が出来ます。単なる経営環境の悪化などによる市場価額の下落だけでは認められません。

参考文献:成松洋一著 税務上の評価損の実務事例集